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村上かつらブログ

結婚式/イ・ブル展

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友達の結婚式。
赤坂のANAインターコンチネンタルホテルへ。



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チャペルに一歩踏み入れて、
バージンロードのつきあたりに掲げられた十字架のマークを見ただけで、
涙がとまらなくなってしまった。



こんなもんにまでいちいち反応してたら、この先が思いやられる。やばい。
…という不安は的中、花嫁がお父様に寄り添われて一礼したときは、
しゃくり上げて泣いてしまった。
もしかしたら、今までの結婚式で、一番泣いたかもしれない。



一人で出席すると、こんなにおごそかな気分でお祝いできるんだな。
「このテーブル全員友達」みたいなお式だと、
ついつい、花嫁のいつになくまじめな顔につっこみ入れちゃったりして。
(それはそれで楽しいのだけど。)




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高揚した気分のまま会場を出ると、
インターコンチネンタルの中のバス停に、
ちょうど六本木駅行きのバスが停まっていた。
「えーい、今日はもう、仕事はいいか!」と、バスに乗って、
気になっていた、森美術館「イ・ブル展」を観に行く。



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会場は、大きく4つのセクションで構成されている。


セクション2の途中に用意されている、
彼女の制作スタジオのイメージを再構成したという
アトリエのようなスペースは、とても興味深い。


散らかった作業台に、一見無造作に置かれた試作品たち。
壁一面に貼られた、色彩豊かなドローイングは、
これまでのセクションで出会った立体模型たちの、最初のイメージ画だ。


「わたしは思いついたアイデアをスケッチや言葉にして
 スタジオの壁いっぱいに貼っておく。
 それを毎日ながめながら
 それがアイデアの図解へと成長し
 あるときそれらを
 ”何かより具体的にはっきりしたもの”に
 できるかもしれない、と感じるのだ。」


とは、入り口に掲げられた、イ・ブルその人の言葉。


■ ■ ■ ■ ■


このセクションで、特に心をひかれるのが、
スタジオのそこここで、背中を丸めて嘔吐する、犬の模型。
これが、実に、30体もいる!


ステンレス、アルミ、ワイヤーなどの硬い素材から、
新聞紙、ウレタン、スタイルフォーム、綿、木、革、粘土・・・


伝統的な素材と、全く自由な素材、両方を駆使しながら、
犬の感覚や記憶の可視化を試みたという。


これらの犬たちは、すべて、たったひとつの作品、
「秘密を共有するもの」のために作られたマケット(試作品)だ。



「秘密を共有するもの」は、
彼女の20年間の仕事とその葛藤を知っている愛犬をモチーフにした新作で、
「イ・ブル展」最後のセクションに展示されている。


苦しそうにうずくまる、30体もの犬たちのおかげで、
このあと用意された、とびきりの一匹との対面に、胸がときめいた。


■ ■ ■ ■ ■


彼は。
床一面にキラキラと吐瀉物をぶちまけて、
その飛沫は、眼下に広がる六本木の高層ビル群にもぶっかかっていた。


彼もまた、犬が嘔吐するときの、あのポーズ、
背中を丸め、肩をすくめていたが、
30匹の習作わんちゃんとちがって、
出すもの出して、どこか気持ち良さそうに見えた。
いったいこの小さな身体に、どれほどの秘密を抱えていたの。
まだまだ出てくる、そんな気さえする。



ショートフィルムの中で、彼女はこう語っている。


この作品のもとになったイメージは、
草に寝そべっていた、年老いた愛犬が、ゆっくり起き上がって、
吐いてしまった、という出来事なのだという。
彼女のアトリエは山の上にあるので、犬の背の向こうには町が見下ろせた。
後に、それ(嘔吐)は、犬が食べ物を消化するときによくあることだと知ったが
彼が孤独に見えて、その姿はいつまでも目に焼き付いていた。・・・



果たして、その孤独は、誰のものだったのかな。


傍らにいた犬が、20年分の仕事とその葛藤を共有してくれていた、と信じたい、
芸術家イ・ブルその人の巨大な孤独ではないのかな。なんて、思ってしまう。


■ ■ ■ ■ ■


そーーっと近寄ったら、
彼を構成する一部分である、鏡の破片に、自分の姿が写っていた。
たくさん泣いたあとの、みっともない顔だった。
わ、帰らなきゃ!


もしかしたら、このあとわたしより遥かに長い時間を生きることになるかもしれない「彼」
と、一瞬だけ共有した秘密。




(本文は、許可をいただいて壁面の解説文を手帳に書き留めたものと、
 音声ガイドの解説を参考に書いています。)





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  1. 2012/03/21(水) 23:47:11|
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